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結婚式が済んだ白桜(はくおう)と真麻(しんま)は、その日初夜を迎えようとしていた。

初夜なんて、もう体の関係がある白桜と真麻には関係のないことのようで、やはり儀式的なものもあって、初夜には立派な宿の一番高い部屋を選んでくれた。

「さぁ、初夜をはじめようか」

抱き寄せられて、自然と白桜から艶やかな吐息が出る。
白桜を寝具に押し倒して、真麻はいた着ていた彼の着物をはぐと、寝具に強く手首を押し付ける。

「真麻。痛い」

真麻は、その言葉に手首を離す。
そして、白桜に接吻をした。
何度も角度をかえて口づけられて、白桜の意識が混濁する。
「あっ」
舌が絡み合い、二人は獣のように体を抱き合う。
つっと、銀の糸を引いて去っていく真麻の舌を追いかけて、白桜が自分から接吻をしてきた。
もう一度、お互いに口づけあって、白桜は桃色の吐息を吐く。

「甘いな」
「嘘ばっかり」

白桜は、微笑する。
その絶対的な美貌は、妖しいまでに煌めいていた。

両性具有が持つべき蒼や水色の色を帯びない白桜。商品価値としては色が白子であるため下かもしれないが、他の両性具有よりも極めて美しいため、きっと真麻がいなければ攫われてしまうかもしれない。

だから、真麻は常に白桜の側にいた。

「どこもかしこも甘い」

胸の尖りを舌で嬲られる。

「あっ」

もう片方はいじられ、そして薄い胸全体を愛撫するかのように何度も撫でられる。
白い白桜の太ももや首筋をきつく吸い上げ、自分のものだという証を残していく真麻は、いつになく優しく白桜を愛撫した。

「んああ」

胸ばかり撫でられ、白桜の花茎が反応した。
すると、真麻はそれをいきなり口に含んだ。白真の花茎は、子供のように未熟であるが、精を吐き出すということは知っていた。

「いや、いや、いやあああ!!」

そこは、一番敏感な部分だ。何度も舌で愛撫され、吸われて、呆気なく白桜は気を真麻の口に放ってしまった。それを、真麻は躊躇もなく飲み込む。

白桜の吐息が熱くなる。
太ももを撫で上げられて、秘所にゆっくりと手を這わせる真麻。

「ああっ」

感じやすい白桜は、それだけで艶やかに啼く。
指を一本、秘所に入れる。それから三本に増やして、ぐちゃぐちゃと音がなるまでかき混ぜた。

白桜の、意識が、溶けていく。
指が引き抜かれたかと思うと、熱い舌が侵入してきた。
何度も舌でこねまわされて、白桜はまだいれられてもいないのに、また白濁の液を吐いた。

「感じやすいな。今日は」
「そんなこと、ない。早く。早くきて」

両手を広げ、求められるままに真麻は白桜の秘所に挿入した。
ズプリと、音がして、その濡れた音に目から涙が滴る。

「泣くな」
「いいの。嬉しくて泣いているんだから」

何度も、白桜が感じる場所を突き上げる。最初は入り口をかき混ぜるように動き、深いストロークを繰り返して、最奥まで侵入してはまた入口に戻ることを繰り返す。
ズプ、ズプと、その度に濡れた音がした。

「たまにはこんなのはどうだ?」

そう言って、真麻が取り出したのは随喜(ずいき)と呼ばれる東の国の閨で使われる道具だった。干した山芋の茎でできており、ぬるま湯にひたして適度な硬さにして、秘所にあてがうというもの。
どこで買ってきたのか、真麻はすでに用意していたぬるま湯に随喜をひたし、白桜の秘所に入れてみた。

「あああっ!」
真麻とは違う、感触。
何度も、知らない感触に、白桜を桃源郷へと押しやってしまう。

真麻は随喜を手で動かしながら、またたちあがった白桜の花茎を口に含み、転がした。
「やっ!一緒はいやぁ!」
「それがいいんだろう?」
「一緒は・・・・あ、んあっ」

随喜なんていらない。欲しいのは、真麻だけ。
濡れた音をたてる秘所を、自分で押し広げて、白桜は叫んだ。

「それいらない。本物を、真麻をちょうだいっ!」

ねだられて、真麻は濡れた随喜をぽいと捨てると、また白桜の秘所にゆっくりと侵入した。
ズクンと、奥深くまで突き上げて、強弱をつけて中をかき回す。

「あ、あ、いああああ」

振動に合わせて緩くいじられている花茎からポタポタと体液がにじみ出て、寝具を汚した。

「寝具が・・・・汚れ、ちゃう・・・・ああっ」
「汚れても構わない。それだけの値を払った」
両足を大きく開かれて、そのまま深く挿入してくる。

「ん、あ」

口づけし、貪りあう。
初夜というよりは、獣の交尾みたいだと白桜は思った。

真麻は、思い切り秘所を突き上げる。
ジュプっと、濡れた音が二人の鼓膜を打つ。白桜は、真麻を桃源郷に連れていくように、秘所に力をこめて締め上げる。

「・・・・っ」

花街で、色子として体を売っていた頃に教わった技術だった。
「もっと・・・・もっと!」
白桜は、色欲にまみれながらも、美しさを忘れることなく、妖艶に真麻にねだる。

二人は、獣のように混じりあった。
蕾にまで真麻自身を突き入れられ、それにも嬌声をあげる白桜。

誰よりも淫らな、白い桜は真麻の身体の下で、乱れながら花びらを散らしていく。

「もっと奥まで・・・・」

蕾の奥深くまで突き上げて、一緒に白桜の花茎を手ですりあげると、白桜は大粒の涙を零し、それはつけていた明りに輝いて、滴となって寝具を濡らす。
「はっ・・・ん」

前立腺を擦りあげられて、白桜は鳴いた。
薄い胸を何度も撫で上げられ、先端をきつくつままれ、片方を口に含んで舌で転がされる。
真麻は、白桜の蕾の奥深くに侵入する。
グチャ。
濡れた音がひっきりなしに、二人の耳朶を打つのだが、そんなことお構いなしに、真麻は白桜の熟れた体を存分に味わうと、最奥で精を放った。
そして、ゆっくりと引き抜く。

「一緒に風呂に入ろうか」
「風呂でも、またやるくせに」

「ばれていたか」

「俺はもう、永遠にお前のものだ。手放すな。お前も、永遠に俺のものだ」

白桜は、淫らに咲いては真麻を誘う。

白桜という名をもらってよかった。愛した人の手の中でいつでも咲き誇れるから。そして時にはその体の下で散っては、また咲くのだ。
それが白桜。

白桜は薄い桃色の目を閉じて、体をもう一度つなげたまま、真麻に囁きかける。

「真麻以外、何もいらない」
「そう買い被るな」

二人の初夜は、そうして更けていったのであった。

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白桜は真麻と共に宿をとった。
宿の中でも上流の宿。白桜の水揚げ代を惜しみなくだした、真国の皇子である真麻には豊富な資金があった。だから、宿も一流のものをとる。

惜しみない金の出し方に、白桜は少し不安になった。いくら水揚げされたとはいえ、元はただの花魁。皇子の、しかも枢機卿という身分の真麻とどこかですれ違いになりそうで。

だから、白桜は自分がもっているもの全てで、真麻を落とそうとする。
すでに、手中に真麻はいるのに、それでも不安なのだ。

老いさらばえ、醜くなってしまったとき、どうなるのだろうか。子供もできず、いつか真麻は違う人と結婚するかもしれない。白桜をおいて、どこかにいってしまうかもしれない。

ゆらゆらと揺れているのは、白桜ではなく、実は真麻のほうではないのだろうか。桜のように散ってしまう白桜を好いて、愛してくれる真麻。
彼とずっと一緒にいたいと思う。
だから、子供が欲しいと思った。
でも、花街の医者に子供は身ごもることはできないと、宣言されている。
白桜の体が出来損ないなのだろう。両性具有という、出来損ない。
でも、両性具有だからこそ、真麻に出会い魅かれ、水揚げされた。

「ぐ・・・・・」

吐き気がして、白桜は寝ている真麻を置いて洗面所にいった。それから、太ももに赤い血が秘所から流れ出ているのに気付き、備えつけの洗い場で、湯を張ってそれにひたる。
血に彩られて、白桜の目のように、薄い桃色になる湯船。
大量に出血している。両性具有の中でも、生理になる者は半数はいるが、ここまで出血する者は珍しいだろう。

「どうせ生まれないんだ。どうせ身籠れないんだ。いらない。子宮なんていらない」

自分の体に備わった器官を、否定することしか、白桜にはできなかった。
桃色になってしまった湯を流し、新しい湯を張る。
出血は止まらず、白桜は石鹸で泡をたてて全身を洗うと、洗い場でしゃがみこんだ。

「どうしてあるんだ。生理なんて。いらないのに。意味はないのに」

言葉に涙が混じる。

いらないもの。生理は普通子供ができるための証でもある。でも、白桜の生理はなんの意味もないただの秘所からの大量出血。

くらりと、出血のせいで頭が傾ぐのを防ぐために、ひらすた肌を磨いて意識を保った。


「白桜?いるのか?」

「入ってくるな!!」

真麻が、白桜がいないことに気づいて、水音のする洗い場にやってきたのだ。

「入るぞ」

「入ってくるな!!」

白桜は絶叫した。

「どうしてそこまで否定する」

「俺には、できない。お前の子を産むことが」

やってきた真麻は、白桜が濡れているのにも構わずに、その体を包み込む。
そのことに、白桜は安堵感を覚えた。

「濡れるぞ」

「構うものか」

短く押し問答を繰り返した後、真麻は布で白桜の全身を拭いて、少し浪打つ白い髪をも拭った。

「ただ、産まれたら嬉しいと思っただけだ。お前に強制してるわけじゃない。だから泣くな」

「泣いてなんかいない」

薄桃の、桜色の瞳から涙を溢れさせて、白桜は真麻に縋り付いた。

「泣いているだろう」

「泣いてなんか、いない」

その涙を、そっと真麻の唇が吸い取る。

「お前は俺の桜なんだ。咲いても、俺のために散っても、またすぐ花を咲かせる桜なんだ」

「本当の桜は年に一度しか花を咲かせ、散らさないぞ」

「お前は別格なんだよ。俺のために咲き乱れ、俺の腕の下で淫らに散って、また花をつける・・・・・・白桜」

「なんだよ」

洗い場から連れ出され、新しい服を着せられた。

まだ夜だ。室内は静寂に満ちていて、外は夜の帳が降りている。虫の鳴く声も聞こえない。季節としては、春が終わりになりかけていた。
ちょうど、桜は全て散り終わって、葉桜になる季節。


「白桜。結婚しよう」

「は?いきなり何を言ってるんだお前は。お前は、真国の皇子だろう!」

「そんなこと。身分なんてどうでもいい。結婚しよう」

真麻は、真剣そのものの表情で、濡れた白桜の白い髪を一房手に取ると、口づける。

「結婚をしよう。明日にでも。本当は真国についてから華やかに結婚式をして、弟とその妃にも祝ってもらいたいと思っていた。でももういい。明日結婚式を挙げよう。それで白桜の不安が払拭できるなら安いものだ」

「不安なんて」

「不安なんだろう?」

覗き込みむように顔を見られて、また涙が零れた。

「ああ、不安だ。悪いか」

「両性具有であるお前を選んだのは、この俺自身だ。不安になる必要など、何もないんだぞ」

真麻は、白桜をまた包み込む。そして、白桜の髪を結いあげて、金色の鈴がついた髪飾りをさした。

チリン。チリン、チリン。

鈴はなる。軽やかに。

「白き桜はかの者にだけ散る」

真麻は、白桜を抱きしめながら、薄く微笑んだ。

「なんだ、それ・・・・」

「知らないのか。昔の偉い人の詩の一部さ。まさにお前にぴったりだろう。俺だけのために散って、俺だけのためにまた咲いて」

チリン。チリン。

鈴がなる。
そして、翌日には静かな小規模の、祝う人もいない二人の結婚式が執り行われるのであった。

               END

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「んう」

耐えようとしても、嬌声はすぐに出てしまった。
チリンと、揺れる鈴と一緒に、白桜の髪が乱れる。
まさぐるように、脱がされた衣服の裾から真麻は、白すぎる白桜の太ももを何度も撫で上げる。
下着にふれて、そこから緩く秘所を撫でられて、ひゅうと白桜の喉が鳴った。

「キスを……」

強請られるままに、白桜と唇を重ねる真麻。
何度も啄むように口づけをかわし、互いの舌を絡ませ合い、歯茎や上顎などを刺激する。
それから、真麻は、膨らみのない白桜のその薄い胸を何度も右手で撫で上げる。
それから、先端にきつく噛みついて、指で何度も弾いた。

「あ……」

白桜の薄紅色の瞳は、興奮した刺激が血が集まって真紅に輝いていた。

元々アルビノ種である白桜の瞳は真紅だが、何故か両性であるせいか、薄い紅色をしている。両性がもつ、蒼銀も水色も、その色を一つとして持たぬ白桜の、両性としての価値は低い。
だが、それを凌駕するほどの美貌がある。
両性は皆、飛びぬけて美しいが、白桜は中でも際立った美しさを秘めている。

男のように振る舞い、粗野な行動や言動をとるが、艶事となると人が変わったように、淫靡な生き物になった。
それは花街で生きてきたせいもあるかもしれないが、真麻にだけ見せる、本当の白桜の姿。
浅ましくもありながら、人の本能の行動をとる白桜は艶めいている。

「もっと声を出せ。我慢しなくていい」
「んーーー」

白桜の口に指を乱暴につっこんで、それから下着を完全に脱がし、その秘所に舌を入れる。
すると、びくりと白桜の全身が一度痙攣した。

「もういったのか。早いな」
「う、るさ……ああっ」

ぐりぐりと抉られるように中を何度も刺激され、指まで入れられかき回されて、白桜は苦しげに喘いだ。

「あ、あ……」

真麻が、服を脱ぎだす。その金色の髪に手で触れて、白桜は褥で乱れながら、相手を誘うように白い肌を擦り付けてくる。

「こいよ……」
「もういいのか。まだ少ししか濡れていない」
「いいんだよ。俺のそこは濡れるとか、そんな風にあんまりできてないんだから」
「分かった」

白桜の太ももを開き、秘所に真麻は自身を突き入れる。
その灼熱に、白桜は涙を零した。
緩やかに奥まで突き入れられて、それから抉るように何度も軽いストロークを繰り返し、白桜が一番感じるである秘所の入り口付近にねじこむように、何度もたたきつける。

「ひああああ、あ、あ!」

啼くことしかできぬ白い桜は、綺麗な純白の髪を宙に舞わせて、まるでその髪は踊り子のようだ。

ズチュ、グプププと、突き入れられるたびに秘所から愛液が溢れ、互いの体液とまじりあって、泡立っていく。

ぐちゅり。

「いや!それはいや!」

逃げようとする白桜を軽く体重をかけて制する。
支配する。

成人男性のサイズよりは小さいが、子供のそれという大きさではない白桜の花茎を、真麻はそこと秘所の両方か、蕾を一緒に責められると極端に彼が弱いことを知り尽くしているので、彼が嫌がっても、快感を与えるために花茎を手ですりあげた。
たちあがった花茎は先端から白い体液の、快感の証を滲み出させていた。

「あ、あ、いや、いやああぁぁぁ!!」

頭が真っ白になってスパークする衝撃。
ズンと、腹の奥まで真麻が熱の楔を突き入れ、そして揺さぶった。
それと一緒に、くちゅくちゅと音をたてて、激しく白桜の花茎を手で扱う。

「あああ!!」

白桜は、秘所で真麻の精液を受け止めながら、涙を零す。この子種で、孕むことが本当にできるのなら、子が欲しい。
愛する人の子が。
男なのか女なのか、思考は曖昧になる瞬間。
両性であっても、白桜の性格は男性的なものであった。だが、真麻と肌を重ねる度に、それは女の方向へと傾きつつあった。

ぐりりと、先端に爪を立てられて、白桜はすすり泣きながら、射精した。
白い体液で、真麻の手を汚して。

「そこは……いやだって、いってるの、に」

子供のように泣きじゃくる白桜の秘所から楔を抜き、何を思ったか、真麻は弱いという白桜の花茎を口に含んだ。

「いやぁぁ!!」

暴れようにも、体力が残されていない。

「あ、あ、だめぇ……」

ねっとりと、絡みついてくる舌の温度と、口に含まれるたびに、その衝動ですぐに射精しそうになるが、根元を戒められて、どうしようもない快感だけが、頭をぐるぐる廻っていた。

「うあああぁぁぁ!」

こぷり。
秘所から流れ出た二人の体液が混ざった液体が、白桜の太ももを汚していく。そこに右手の指を突き入れて、秘所の入り口、女の身体の部分で最も感じる部分を撫でるように、そしてくりくりと何度も刺激する。

「あ、あ、やらぁ!」

白桜は涙を零して、もう自分が何を言っているのかさえ理解していない。
飲み込み切れなかった唾液が、顎を伝って銀の糸を引く。

びくんと、強張る躰。弓なりにしなる背中。

「だ、めぇ!」

痙攣する足。布団のシーツをひっかく指の爪。
くちゃり、ぐちゅ。
何度もなめあげられる。
何度もいじられて、真麻の口の中であっけなくいってしまった後は、放心したように時折体を痙攣させて、余韻に支配されていた。

白桜は、涙を一筋零して、微睡むように意識を失った。

躰を重ねることを何度望んでも、この躰に命が宿ることは、きっとない。真麻に抱えられて、湯殿で後始末と躰を洗われていた時、ふと白桜は目を覚ました。
湯の中にゆらゆら浮かんでいる長い白い髪と、真麻の金髪がまじりあっていた。

そして、傷ができたわけでもないのに、血を湯に滲ませる秘所。
止まっていたと思っていた月経がまた始まったのだろう。彼は両性であるが故に、月経もまた不規則に訪れる。

何度体を重ねても、流れていく命の元。
孕むことなどありはしないのだ。

白桜は、知っている。花街で一度医者に診てもらった時、子を望むのは絶望的であると医者に言われたのだ。月のものはあるかもしれないが、正常に妊娠することは不可能。
その時は鼻で笑った。
両性であり、色子として商いをしていたので、子供などいらないし、欲しくもないと。
だが、今は。

流れていく血の色を忘れようと、白桜は真麻の肩に頭をすり寄せる。

「どうした?」
「ううん。なんでもない、から………」

悟られてはいけない。この寂寞とした不安と、虚しさを。
白桜は、真麻の空の色に似た瞳に向かって、曖昧に微笑んだ。

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シャランシャラン。
風に乗って音が零れ落ちる。

白桜(ハクオウ)の長い白い髪が揺れる度に、その髪にさした簪の鈴の音が軽やかに、そして情緒的に音を立てる。
真っ直ぐ伸びた髪を少しだけ結いあげて、残りの髪は背中に流している。

花街の花魁だけでなく、女郎、色子も髪が長い者は普通に、髪をいくつにも束ねて結い合あげて、そこに簪やら櫛やら、美しい色合いのものをさして、自分を美しく見せるのが常であった。

花街に住んでいた白桜にも、その名残が見受けられる。
簪を髪にさして、少し結い上げるのが、癖になっていた。
白桜が動く度に、簪についた金の鈴はシャランシャランと硬質的だけれど、涼やかな音を響かせる。

「待て、そんなに急ぐな」
「遅いよ真麻(シンマ)」

白桜は、真麻より少し早い速度で足を歩める。
真麻は、金の髪を風に靡かせて、ため息をつきながら、白桜を追いかける。
彼の蒼い瞳と同じ色の紺碧の空が、頭上を見上げれば彼方まで広がっている。白い棚引く雲に、優しく大地を照らす黄金の太陽。
何処までも平和で長閑であった。

鈴国(レイコク)の花街、「雪月の花里」にある廓「明月」の花魁であった白桜。遊女としてでも、色子としてでもなく、中性、両性具有の花魁であった。
本来なら両性具有は花街で商いはしてはいけない決まりになっていた。
明月の廓に来る前は、色子として商いをしていたが、両性として商いをしたことはない。その躰の全てを手に入れたのは、白桜の隣を歩いている、彼を身請けした真麻であった。
彼を水揚げしたのも。

真麻は、太陽国と名高き真国(シンコク)の現王の兄王子である。もともと鈴国には、枢機卿となるべく、法王の元で勉学に励んでいた。
それが何の因果か、白桜という両性具有と知り合い、そして友となり、そして恋をしてしまった。最初に真麻に恋をしたのは白桜だった。
花魁とはいえ、遊女にして色子でもある白桜が、どんなに背伸びしても届かぬ、その身分の高さにも魅かれた。

だが、真麻という人間そのものに、一番惹かれたのは事実。彼がどんな身分であっても、白桜は真麻と出会う運命にある限り、彼に恋をしただろう。

太陽暦2033年の、初夏であった。

鈴国を出た二人は、真国に帰るための旅をしていた。真国への船が出ているのは隣国の楚(ソ)という国だ。その楚国より大分離れた桟(サン)という国にきていた。
宝石などの鉱山と金の採掘が高く、小さいながらも豊かで潤った国であった。

港が近い町にいるため、風に乗って僅かながら潮の匂いが鼻孔をかすめる。

白桜の、まるで水面を漂う水草のように、たよりなく揺れているような、その白い髪に手を伸ばして、真麻は彼を捕えた。

「痛いじゃないか」

頬を膨らませる白桜の、二十歳をこえているだろうに、どうにも童顔で、美しい少女にしか見えぬ面を見て、真麻は苦笑した。

「ふわふわ金魚のように泳いでいないで、いい加減俺の元に帰ってこい」

すでに、その手元には白桜がいる。白子(アルビノ)であるため、髪の色は真っ白で、瞳の色が薄い桃色をしている。時折真紅にも見えるその眼。
両性具有にありがちな蒼銀や、最上とされる水色の髪も瞳も持たぬ白桜は、行き交う人がみればただ美しいだけの美少女に見えるだろう。
傾国の美を、他の両性具有のように、同じように持つ白桜のことが、それでも心配でならぬ真麻。

蒼銀や水色の色をもっていれば、すでに拉致されて売られていたかもしれない。真麻が目を離したすきに、買い食いをしに離れてしまったり、心配の種はつきない。
少しは、自分の容姿というものを理解してくれないと困る。

「白桜。風に乗って散るのはいいが、俺の元で散れよ」

その言葉は、一見すると何の意味もないように思えるが、自分の下で乱れろとそういう意味なのだろう。
白桜は顔を紅くした。
真麻が、白桜の、朱をさした花魁時代の癖が抜けない瞼に口づける。それから、ふっくらとした紅をさしたかのようにあかい唇にも。

「………したくなった。責任とれよ」

真麻の首に手を伸ばして、白桜が妖艶な笑みを見せた。

「ああ、とってやるとも」

初夏の少し暑い日差しを手で遮って、二人は歩いていく。いくのは宿屋ではなく、逢引などに使われる茶屋の上にある部屋だろう。茶屋と看板にかかれた店を見つけて、少し波打つようになってきた、白桜の長い白髪が、真麻の視界を塞いだ。

「夜まで待たないからな」

艶っぽくささやかれる。耳元で。それがくすぐったくて、真麻は、白桜の身体を横抱きにして、茶屋の暖簾をくぐり、代金を置いて3階の空いている部屋へと足を動かす。

「少し痩せたか?」
「いいや。最近月のものがまた出てきて……少し食欲がないだけだ」
「月経か」
「悪かったな。こんな出来損ないの両性具有なのに、月経なんてあって」
「いや。俺の子をいつか、産んでくれ」

どさりと、すでに床に敷かれていた布団の上に転がされて、白桜が着ていた着物を肌蹴る。

「………」

白桜は、沈黙して、痛いほど真麻の背中に、爪を立てるのであった。

チリン。
白桜の、真麻からもらった簪の鈴が、畳の上に転がり、白い波を漂うに、白桜の長い髪が広がる。
白桜は、目を瞑って、真麻と唇を重ねるのであった。

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