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白桜は真麻と共に宿をとった。
宿の中でも上流の宿。白桜の水揚げ代を惜しみなくだした、真国の皇子である真麻には豊富な資金があった。だから、宿も一流のものをとる。
惜しみない金の出し方に、白桜は少し不安になった。いくら水揚げされたとはいえ、元はただの花魁。皇子の、しかも枢機卿という身分の真麻とどこかですれ違いになりそうで。
だから、白桜は自分がもっているもの全てで、真麻を落とそうとする。
すでに、手中に真麻はいるのに、それでも不安なのだ。
老いさらばえ、醜くなってしまったとき、どうなるのだろうか。子供もできず、いつか真麻は違う人と結婚するかもしれない。白桜をおいて、どこかにいってしまうかもしれない。
ゆらゆらと揺れているのは、白桜ではなく、実は真麻のほうではないのだろうか。桜のように散ってしまう白桜を好いて、愛してくれる真麻。
彼とずっと一緒にいたいと思う。
だから、子供が欲しいと思った。
でも、花街の医者に子供は身ごもることはできないと、宣言されている。
白桜の体が出来損ないなのだろう。両性具有という、出来損ない。
でも、両性具有だからこそ、真麻に出会い魅かれ、水揚げされた。
「ぐ・・・・・」
吐き気がして、白桜は寝ている真麻を置いて洗面所にいった。それから、太ももに赤い血が秘所から流れ出ているのに気付き、備えつけの洗い場で、湯を張ってそれにひたる。
血に彩られて、白桜の目のように、薄い桃色になる湯船。
大量に出血している。両性具有の中でも、生理になる者は半数はいるが、ここまで出血する者は珍しいだろう。
「どうせ生まれないんだ。どうせ身籠れないんだ。いらない。子宮なんていらない」
自分の体に備わった器官を、否定することしか、白桜にはできなかった。
桃色になってしまった湯を流し、新しい湯を張る。
出血は止まらず、白桜は石鹸で泡をたてて全身を洗うと、洗い場でしゃがみこんだ。
「どうしてあるんだ。生理なんて。いらないのに。意味はないのに」
言葉に涙が混じる。
いらないもの。生理は普通子供ができるための証でもある。でも、白桜の生理はなんの意味もないただの秘所からの大量出血。
くらりと、出血のせいで頭が傾ぐのを防ぐために、ひらすた肌を磨いて意識を保った。
「白桜?いるのか?」
「入ってくるな!!」
真麻が、白桜がいないことに気づいて、水音のする洗い場にやってきたのだ。
「入るぞ」
「入ってくるな!!」
白桜は絶叫した。
「どうしてそこまで否定する」
「俺には、できない。お前の子を産むことが」
やってきた真麻は、白桜が濡れているのにも構わずに、その体を包み込む。
そのことに、白桜は安堵感を覚えた。
「濡れるぞ」
「構うものか」
短く押し問答を繰り返した後、真麻は布で白桜の全身を拭いて、少し浪打つ白い髪をも拭った。
「ただ、産まれたら嬉しいと思っただけだ。お前に強制してるわけじゃない。だから泣くな」
「泣いてなんかいない」
薄桃の、桜色の瞳から涙を溢れさせて、白桜は真麻に縋り付いた。
「泣いているだろう」
「泣いてなんか、いない」
その涙を、そっと真麻の唇が吸い取る。
「お前は俺の桜なんだ。咲いても、俺のために散っても、またすぐ花を咲かせる桜なんだ」
「本当の桜は年に一度しか花を咲かせ、散らさないぞ」
「お前は別格なんだよ。俺のために咲き乱れ、俺の腕の下で淫らに散って、また花をつける・・・・・・白桜」
「なんだよ」
洗い場から連れ出され、新しい服を着せられた。
まだ夜だ。室内は静寂に満ちていて、外は夜の帳が降りている。虫の鳴く声も聞こえない。季節としては、春が終わりになりかけていた。
ちょうど、桜は全て散り終わって、葉桜になる季節。
「白桜。結婚しよう」
「は?いきなり何を言ってるんだお前は。お前は、真国の皇子だろう!」
「そんなこと。身分なんてどうでもいい。結婚しよう」
真麻は、真剣そのものの表情で、濡れた白桜の白い髪を一房手に取ると、口づける。
「結婚をしよう。明日にでも。本当は真国についてから華やかに結婚式をして、弟とその妃にも祝ってもらいたいと思っていた。でももういい。明日結婚式を挙げよう。それで白桜の不安が払拭できるなら安いものだ」
「不安なんて」
「不安なんだろう?」
覗き込みむように顔を見られて、また涙が零れた。
「ああ、不安だ。悪いか」
「両性具有であるお前を選んだのは、この俺自身だ。不安になる必要など、何もないんだぞ」
真麻は、白桜をまた包み込む。そして、白桜の髪を結いあげて、金色の鈴がついた髪飾りをさした。
チリン。チリン、チリン。
鈴はなる。軽やかに。
「白き桜はかの者にだけ散る」
真麻は、白桜を抱きしめながら、薄く微笑んだ。
「なんだ、それ・・・・」
「知らないのか。昔の偉い人の詩の一部さ。まさにお前にぴったりだろう。俺だけのために散って、俺だけのためにまた咲いて」
チリン。チリン。
鈴がなる。
そして、翌日には静かな小規模の、祝う人もいない二人の結婚式が執り行われるのであった。
END
宿の中でも上流の宿。白桜の水揚げ代を惜しみなくだした、真国の皇子である真麻には豊富な資金があった。だから、宿も一流のものをとる。
惜しみない金の出し方に、白桜は少し不安になった。いくら水揚げされたとはいえ、元はただの花魁。皇子の、しかも枢機卿という身分の真麻とどこかですれ違いになりそうで。
だから、白桜は自分がもっているもの全てで、真麻を落とそうとする。
すでに、手中に真麻はいるのに、それでも不安なのだ。
老いさらばえ、醜くなってしまったとき、どうなるのだろうか。子供もできず、いつか真麻は違う人と結婚するかもしれない。白桜をおいて、どこかにいってしまうかもしれない。
ゆらゆらと揺れているのは、白桜ではなく、実は真麻のほうではないのだろうか。桜のように散ってしまう白桜を好いて、愛してくれる真麻。
彼とずっと一緒にいたいと思う。
だから、子供が欲しいと思った。
でも、花街の医者に子供は身ごもることはできないと、宣言されている。
白桜の体が出来損ないなのだろう。両性具有という、出来損ない。
でも、両性具有だからこそ、真麻に出会い魅かれ、水揚げされた。
「ぐ・・・・・」
吐き気がして、白桜は寝ている真麻を置いて洗面所にいった。それから、太ももに赤い血が秘所から流れ出ているのに気付き、備えつけの洗い場で、湯を張ってそれにひたる。
血に彩られて、白桜の目のように、薄い桃色になる湯船。
大量に出血している。両性具有の中でも、生理になる者は半数はいるが、ここまで出血する者は珍しいだろう。
「どうせ生まれないんだ。どうせ身籠れないんだ。いらない。子宮なんていらない」
自分の体に備わった器官を、否定することしか、白桜にはできなかった。
桃色になってしまった湯を流し、新しい湯を張る。
出血は止まらず、白桜は石鹸で泡をたてて全身を洗うと、洗い場でしゃがみこんだ。
「どうしてあるんだ。生理なんて。いらないのに。意味はないのに」
言葉に涙が混じる。
いらないもの。生理は普通子供ができるための証でもある。でも、白桜の生理はなんの意味もないただの秘所からの大量出血。
くらりと、出血のせいで頭が傾ぐのを防ぐために、ひらすた肌を磨いて意識を保った。
「白桜?いるのか?」
「入ってくるな!!」
真麻が、白桜がいないことに気づいて、水音のする洗い場にやってきたのだ。
「入るぞ」
「入ってくるな!!」
白桜は絶叫した。
「どうしてそこまで否定する」
「俺には、できない。お前の子を産むことが」
やってきた真麻は、白桜が濡れているのにも構わずに、その体を包み込む。
そのことに、白桜は安堵感を覚えた。
「濡れるぞ」
「構うものか」
短く押し問答を繰り返した後、真麻は布で白桜の全身を拭いて、少し浪打つ白い髪をも拭った。
「ただ、産まれたら嬉しいと思っただけだ。お前に強制してるわけじゃない。だから泣くな」
「泣いてなんかいない」
薄桃の、桜色の瞳から涙を溢れさせて、白桜は真麻に縋り付いた。
「泣いているだろう」
「泣いてなんか、いない」
その涙を、そっと真麻の唇が吸い取る。
「お前は俺の桜なんだ。咲いても、俺のために散っても、またすぐ花を咲かせる桜なんだ」
「本当の桜は年に一度しか花を咲かせ、散らさないぞ」
「お前は別格なんだよ。俺のために咲き乱れ、俺の腕の下で淫らに散って、また花をつける・・・・・・白桜」
「なんだよ」
洗い場から連れ出され、新しい服を着せられた。
まだ夜だ。室内は静寂に満ちていて、外は夜の帳が降りている。虫の鳴く声も聞こえない。季節としては、春が終わりになりかけていた。
ちょうど、桜は全て散り終わって、葉桜になる季節。
「白桜。結婚しよう」
「は?いきなり何を言ってるんだお前は。お前は、真国の皇子だろう!」
「そんなこと。身分なんてどうでもいい。結婚しよう」
真麻は、真剣そのものの表情で、濡れた白桜の白い髪を一房手に取ると、口づける。
「結婚をしよう。明日にでも。本当は真国についてから華やかに結婚式をして、弟とその妃にも祝ってもらいたいと思っていた。でももういい。明日結婚式を挙げよう。それで白桜の不安が払拭できるなら安いものだ」
「不安なんて」
「不安なんだろう?」
覗き込みむように顔を見られて、また涙が零れた。
「ああ、不安だ。悪いか」
「両性具有であるお前を選んだのは、この俺自身だ。不安になる必要など、何もないんだぞ」
真麻は、白桜をまた包み込む。そして、白桜の髪を結いあげて、金色の鈴がついた髪飾りをさした。
チリン。チリン、チリン。
鈴はなる。軽やかに。
「白き桜はかの者にだけ散る」
真麻は、白桜を抱きしめながら、薄く微笑んだ。
「なんだ、それ・・・・」
「知らないのか。昔の偉い人の詩の一部さ。まさにお前にぴったりだろう。俺だけのために散って、俺だけのためにまた咲いて」
チリン。チリン。
鈴がなる。
そして、翌日には静かな小規模の、祝う人もいない二人の結婚式が執り行われるのであった。
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